この小説は、9uさん(ナイユ)が制作したスレミオの二次創作漫画「ティラミス」に収録されています。漫画の原作者から公開の許可をいただいております。

  小説のストーリーは「ティラミス」の派生作品で、描き下ろしに参加できて、本当に嬉しいです。

  興味のある方は、boothでDL版を購入することをお勧めします:https://nineu.booth.pm/items/5099168

  また、小説の中国語バージョンもあるので、気になる方もぜひチェックしてくださいね:https://cxc.today/zh/store/n62162133/work/10170/reader/147185

 

  —————

 

  

 

  【水星の魔女】空(スレミオ)

 

  

 

  空は澄み渡った青に染まり、その透明感のある色の中に、白い雲がいくつか浮かんでいる。

 

  ミオリネは青い空を見上げて、思い浮かぶのは地球の海だ。命を産み育んだ母なる海の底には、たくさんの傷跡が隠されているが、それら偶然かつ意図的傷つけられても、自然界はすべてを受け入れてきた。

 

  だからこそ、海は包容力の象徴とも言えるだろう。

 

  ぼんやりと考えると、ミオリネはあの寛容で透き通る、一点の曇りもない瞳を思い出した。

 

  スレッタの目は、包容力のある海のようだ。そんな彼女は他人の嘲笑や挑発を恐れず、臆することもなく、己の限界まで挑戦し続ける。何度もミオリネにきつく当たられながら、常に暖かい笑顔を見せ、両手を広げて抱きしめてくれて、辛いことを心の奥にしまいこんだ。

 

  ミオリネは横目で青空を見つめ、さっきから湧き上がるこの想いを、スレッタに打ち明けた。

 

  ミオリネの伝えたいこと、スレッタは大まかに理解しているけれども、すべてが理解できていない。時折、疑問を口にしそうになるが、やはり黙ることにした。

 

  質問して答えを得るより、相手が望んでいるのはゆっくりと考え、ちゃんと理解することのだろう。あるいは、ミオリネは自分の感じたことを適当に述べるだけで、別に気にすることではない。それでも、彼女の言葉は頭の中に留まっていて、青空に白い雲の下を歩く時、スレッタはいつも思い出すのだ。

 

  スレッタのことを青空に例えるよりも、ミオリネこそ空と共に歩んで、ふわふわとした雲のようだと感じている。その後、スレッタはこの思いを彼女に伝えたいと考えた。手のひらに広がった細くてふわっとした白銀の髪からは、微かにさわやかな香りが漂い、触れるたびに心を癒してくれる。自分から運命に向かって前進し、決して途中で諦めない勇敢な少女だと思っているが、髪の毛はその柔らかく、優しい心のようだ。そうでなければ、ミオリネは医療研究に力を注ぐことはなかっただろう。ガンダムの呪いの噂が既に社会に広まり、悪意の中傷や抵抗がどれだけあろうとも、彼女はその道を後悔しなかったのだ。

 

  雲はいつも静かに動き、たとえ1ミリでも1センチでも、前進することをやめない。

 

  ミオリネがその一片の雲なら、スレッタは努力して前進する湛藍の空でありたいと思っている。

 

  未来には不確かなことが多いかもしれないが、彼女たちは共に進んで行けるだろう。

 

  スレッタはたまに晴れ渡った空を見上げ、そんなことを考えているのだ。

 

 

  ★

 

 

  毎日の勤勉は朝から始まった。

 

  二人は規則正しく早起きを心がけている。スレッタは学生時代の生活リズムを保っており、朝は有酸素運動を行い、十数周のジョギングをして汗を流し、満足感を得た後に戻ってきた。

 

  スレッタはシャワーを浴びてから、キッチンで忙しそうな銀色の優雅な姿を見かけた。清潔で快適な状態でそばに寄り、長い腕を妻の腰に回し、ゆっくりと引き寄せた。

 

  「ミオリネさん、おはよう」

 

  「おはよう、スレッタ」

 

  お互いを見つめ合い、思わず笑顔がこぼれた。温かい陽光とともに、二人は軽くキスを交わし、平凡な時間を過ごす幸福感に包まれた。

 

  スレッタと一緒に住むようになって、ミオリネは以前の不規則な生活を改善した。赤毛のパイロットが運動している間、彼女はお弁当を用意した。もしスレッタが帰宅する前に、ミオリネの支度はまだ整っていない場合、助けてもらうこともあった。

 

  「スレッタ、準備はできた?」

 

  「うん、できたよ」

 

  出勤までまだ時間があるため、ミオリネは玄関で待っていた。スレッタがお弁当と持ち物を確認して準備が整ったら、ミオリネの腰に手を回し、二人は一緒に家を出た。

 

  これこそが、平凡な日々の始まりである。

 

  責任部門が異なるため、在宅中以外ではほとんど接点がなかった。そのため、昼休みは一緒に過ごせるので、二人にとって大変貴重な時間だ。

 

  しかし、今回は少し異例なことが起こった。スレッタは普段通りに待ち合わせ場所にやってきたが、しばらく待っても見慣れた姿が現れず、不安がちらっと頭をよぎった。すると、端末が通常とは異なる特別な音を発していた。それはメッセージの送信者を識別するために、特別に設定された音だった。端末をとって確認しなくても、脳裏には既に愛する人の顔が浮かんだ。

 

  やはり、ミオリネからのメッセージだった。メッセージによると、今回の会議ではいくつかのトピックに時間がかかるため、会議が延長されるとのことだ。ミオリネも休憩中だが、移動に時間をかけるのが面倒なため、今日の食事は各自で済ませることになった。

 

  赤毛の女性が端末を操作し、メッセージを送信した。

 

  『了解、ミオリネさん。ゆっくり食事を楽しんで、よく休んでくださいね!』と、愛する人からすぐに簡潔な笑顔のスタンプが届き、スレッタは安心した。

 

  他の地球の同僚と一緒に昼食を共にするかどうか尋ねるつもりだったが、適切な相手が思い浮かばなかった。ほとんどの人は食堂で昼食をとり、この時間になると多くの人は既に食事を終えたのだろう。無駄に時間を使うわけにはいかないため、考えを改めて端末をしまい、スレッタは木陰で食事をすることに決めた。

 

  周囲を見渡すと、ここはオフィスビルの裏に位置し、日陰が広がっていた。微風が彼女の顔に触れ、少し肌寒い感じがした。地面には雑草が生い茂り、数本の太い幹を持つ大きな木が点在している。まさに、人目につかない荒れ地と言える場所だった。スレッタは、この場所を発見した理由を忘れていなかった。

 

  婚姻関係がまだ確定していない時、お互いの気持ちは確かなものとなった。二人は日常的に一緒に過ごし、熱く結ばれていた。性に関してはまだ探求段階で、大胆なことを試みたりすることもしばしばあった。

 

  それは、ミオリネの公務が予定より早く終了し、赤毛の花婿が婚約者を迎えに行った、ある日の夕暮れ時のことだった。恋人を迎える喜びに頬を紅潤させ、走ってくるスレッタの姿を見て、ミオリネの心から喜びが湧き上がってきた。

 

  しかし、銀髪の花嫁は急いで帰るつもりはなかった。フロントの土地を会社用地として購入することになったため、まだしっかりと調査していなかったのだ。そこで二人は手をつないで、広大な惑星の中を歩き回った。

 

  夕日の光が影を落とし始め、二人は暗い通路を抜けて、広々とした秘密の場所にたどり着いた。

 

  雪のように白い手がほんのりと緩み、『ここは……まるで小さな迷路の隅っこみたいね』と囁いた。

 

  『ほんとうだね。あの小道を見つけなかったら……誰も来ることはないでしょう』

 

  赤毛の少女はそのままの考えを述べたが、彼女の言葉は恋人にとって意味深いものだった。

 

  『そうね、ここにいれば、誰にも見つからないわ……』精緻な顔がオレンジ色に染まり、銀色のまつ毛も目を半ば隠し、ミオリネは何かを考えている様子だった。

 

  緩んだ細い指がもう一度、小麦色の大きな手に戻った。指先がその手のひらに触れ、時には軽く、時には力強く擦れ合っていた。銀髪の少女によってくすぐり、心臓がドキッと強く脈打って、スレッタは意識せずに唾液を飲み込んだ。ミオリネは赤毛の少女の前に立ち、腰を浮かせて小麦色の首元に手を回し、恋人に寄り添った。すでに発熱している肌に沿って、湿っぽく吐息が耳元にかけて、情熱的な言葉に変わった。

 

  手はそれに続いて、軽やかに深緑の制服の中に滑り込み、薄い繭から瓷器のように滑らかで繊細な感触が伝わってきた。まるで水面に広がる波紋のように、大きな手のひらが掠め、体の震えを引き起こした。瞳は湖面のように澄んでおり、リップが塗られていて唇の輝きと柔らかさが映し出され、腕の中の人が甘い声を上げた瞬間、スレッタは美しさに誘われてその赤い唇を封じた。

 

  夕暮れも恥ずかしそうに地平線に隠れ、深まっていく夜が二人のために幕を開けた。

 

  その後、時折二人は暗い場所に忍び込んで、禁断の果実を分かち合うことがあった。長い時間が経ち、この場所は専用のひみつ基地となった。

 

  若かりし頃の過去を思い出し、赤毛の女性の顔が恥ずかしさで桃色に染まった。未熟でありながら情事への好奇心に満ちた日々は、既に過去のものとなり、ここはただ単に食事を楽しむための場所に変わってしまった。

 

  今ではふたりとも成人し、さまざまな人間関係と世情に浸りながら、かつての若さと情熱を摩耗してきた。規則正しい健康的な生活リズムを保ちつつ、仕事の重圧によって情熱的な欲求を次第に忘れていったのだ。

 

  まだ二十代半ばなのに、まるで熟年夫婦のようだ。

 

  スレッタは苦笑するが、これに関して特に困ってはいなかった。研究開発に尽力し、GUND医療時代の拡充を担当するGUND-ARM社に従事し、仕事仲間たちと共に進んでいくことは、孤独を埋めるものであり、満足と安定を感じる生活だった。

 

  しかし時折、若々しい学園生活に戻りたくなることもある……

 

  赤毛の女性は我に返り、今は過去を振り返る時間ではないことに気づいた。早く食べないと、昼休みの時間が終わってしまう!

 

  スレッタの膝には、通常の人よりも大きめの弁当箱が置かれていた。もちろん、ミオリネは妻の食欲に詳しいので、食べ物を用意する際は大きな容器を選んだ。逆に、ミオリネの弁当箱は子供用のものにした。

 

  木陰に座るスレッタは、お昼ごはんの入った容器を早速開けてみると、冷めた蒸気が結露して箱の蓋にこびりついていた。弁当箱の中にはふっくらと炊かれたご飯が入っており、他の仕切りにはカラフルで栄養価の高い料理が詰められていて、そして花婿の好きな料理ばかりが含まれていた。スレッタは花嫁の愛情に満ちた食事を嬉しそうに受け取り、がつがつと食べ始めた。

 

  二人とも料理の腕前はあまり得意ではないが、以前の無駄な過剰摂取の習慣を改め、また外食を避けるためにも、休暇の時間を使って市場で食材を選び、家に戻って調理方法を一緒に考えた。時間とともに技術が少しずつ積み重ねられ、ミオリネも独自の調理法を編み出し、花婿が好む味付けを見つけた。

 

  ミオリネは、スレッタが美味しそうに食べる姿を見るのが好きで、その底なしの胃を満足させることができれば、それだけで満足感を感じている。

 

  忙しくて手の込んだ料理を作る時間がない、ミオリネの都合の悪い日もあった。それでも、手料理の入った弁当箱を開ける瞬間、いくらシンプルなものであっても、妻の愛情が込められていることを考えれば、スレッタは感謝の気持ちで完食した。

 

  スレッタは木の下で涼みながら、静かに食事を楽しんでいた。暖かな日差しが濃密な葉間を通して差し込み、身体にはキラキラとした金色の光が広がっている。彼女は顔を上げて人工的な青い空を見上げ、そこに漂うゆっくりとした白い雲の、軽やかで柔らかい綿菓子のように見える様子を眺めた。

 

  雲を摘み取りたいという思いが湧き上がり、手が自然に空へと伸びた。もし取れるのなら、スレッタはそれをミオリネに贈るつもりだ。後者は甘いものが苦手で、いつも黒コーヒーを飲むことが多いが、それでも贈りたいと考えている。

 

  なぜなら、あの白くてきれいな綿がまるで愛する人の絶え間ない、愛情の柔らかさのようだ。

 

 

  ★

 

 

  休みの午後は、のんびりとした時間だ。普段は仕事に追われている二人にとって、珍しいくつろぎのひと時ですが、どう過ごすか迷ってしまう。

 

  「そういえば昔、リストを作ったこと覚えてる?学校の頃に」

 

  「それは……ありますけど——」赤毛の女性は、後ろ髪を触りながら言葉を詰まらせた。

 

  確かに、スレッタにはミオリネと一緒に実現したいことがたくさんあるが、数が多すぎて選べないのだ。

 

  「あ、思い出しました!」

 

  目の前に、赤毛の女性はキャビネットからプラスチックケースを取り出した。半透明のプラスチックケースは時代の流れでわずかに黄ばんでおり、それでもミオリネは曇った表面からその用途が推測できた。

 

  「映画?」銀髪の女性はそう言って、眉をひそめた。

 

  「これ、ずっと前にアリヤさんからもらったものなんです。地球の昔の時代に流行ったホラー映画って言ってて、一人で見るのが怖くて今まで放置してたんです……」スレッタは二本の指先同士をつんつんさせて、期待しすぎないように弱々しく提案してみた、「ミオリネさん、興味がありますか?」

 

  紫銀色の瞳は封面の写真に向けた。現代に比べてやや粗雑なCGや構図に対して、あまり興味が湧いて来なかったので、以前の自分なら絶対に断るはずだ。それなのに、湖のような緑色の瞳は光を宿し、ミオリネの心を隅々まで照らし、中にあるわずかの迷いを断ち切った。

 

  「まあ、いいわ」赤毛の女性の期待を一身に受けて、ミオリネは腰に手を当てて、平然とした声で言い放った、「昔の撮影技術がどれほどだったか見てみたいかな……」

 

  妻の合理的な態度に、感受的なスレッタは不満そうな顔をして、唇を尖らせ気味に突き出した。

 

  「ミオリネさん、技術のことなんてあまり気にしないで、今は映画を楽しむことに専念しようよ——」

 

  伴侶の注意を受け、ミオリネは赤面した、「分かったわ、分かった!」

 

  手に持っていた映画は相手に取り上げられ、赤毛の女性は勝利を得たかのように、口角を上げて笑った。

 

  「ミオリネさんと映画を見る」という願望リストの項目は、そのまま実現されることになった。

 

  現代の技術では過去の映像を再生することはできないが、データの豊富な時代においては、過去の情報を簡単に検索して取り出せる。ミオリネはすぐに、封面と一致する映画を見つけた。

 

  カーテンを閉めてから、ハロがプロジェクターとして壁に映像を投影した。ミオリネはソファでくつろいでおり、映画自体にはほとんど興味を持っていないので、退屈そうな顔をしている。

 

  ——スレッタに付き合って映画を見ることを、任務として遂行しよう。

 

  そう思っていたミオリネは、隣の人がいつの間にか緊張し、心細い状態になったことに気付いた。

 

  銀色の目と視線を交わし、スレッタは恥ずかしそうに苦笑いした。

 

  「子供の頃、お母さんが出張で家にいなかったことがあって、好奇心からエアリアルにホラー映画を見せてもらったことがあるんだ。結果、一晩中エアリアルの中に隠れて出てこなかったよ!臆病者みたいで笑えるでしょう?ハハ……」

 

  「怖がっているなら、何でホラー映画を見たいと言い出すのよ」

 

  ミオリネは愚痴をこぼし、この純粋なパートナーと初めて出会った時、彼女の弱々しく繊細な様子を思い出した。小さな子供が小動物のように、プルプル震える姿を想像したら、可愛らしいであろうと考え、口元が自然に上がった。

 

  「まあ、いいわ……昔とは違って、私はここにいるから——」スレッタの肩に寄りかかり、ミオリネは穏やかで優しい言葉で言った、「ちゃんと、あんたのそばにいるわ」

 

  小さな手がつながり、スレッタの心は穏やかで満たされた。二人はどんな困難にも立ち向かう、これまで互いを支えてきた通りだ。

 

  「ありがとう……ミオリネさん。」

 

  もう一方の手がミオリネの優しい手の甲を覆い、スレッタの頭は愛おしい人に近づいた。

 

  そこで、映画が始まった——

 

  時間がだんだん経ち、物語が中盤のクライマックスに向かって進展した。

 

  ミオリネの眉間には常にしわが寄り、長い間何も起こらないことに対して、絶えず続く映画はやはり我慢できかねるものだった。

 

  ストーリーが退屈で何度も眠気を誘ったが、そしてパートナーが没頭しているのを見て、ミオリネは眠気を我慢して見続けた間、作品に対する絶望的な評価が次々と押し寄せた。

 

  理解不能……あまりにも理解不能で、しかも意味不明すぎて笑えるほどだ。

 

  ミオリネはため息をつき、あくびを手で押さえると、仕方がなく半開きの目で画面を見つめた。

 

  ——これからはあれだろう……「ジャンプスケア」が始まるってとこかな。

 

  そう思うや否や、ミオリネの予想通り、不気味な音とともに、恐ろしい影が画面を駆け抜けた。技術的にはジャンプスケアの効果があるものの、彼女にとってはわざとらしく、臨場感が感じられなかった。

 

  銀髪の女性は無言で冷笑し、隣からいきなり叫び声が聞こえた。

 

  「ぎゃあ——!」

 

  「わ!」

 

  心底からの悲鳴があえて恐怖となり、体中に急速に広がって、ミオリネは驚いて固まった。映画よりも恋人の叫び声がまさに「ジャンプスケア」とは、彼女にとって予想外のことだった。

 

  ミオリネは一方の手で胸を押さえ、驚きの余韻がまだ残っているのを感じながら、大きな目でスレッタを見た。スレッタは既に驚きすぎて震え上がり、両目をぴったり閉じ、肩を引き締めて震え続け、わずかに開いた唇も震えていた。

 

  思い出がチラッと蘇り、自分が毛布に包まって泣いている姿が浮かんだ。母の死は人生に大きな変化をもたらし、弱々しい心は無情な人々の視線や同情に耐えられず、感情を内に秘めてしまうしかなかった。

 

  幼少期の自分とスレッタの姿が重なり、胸がちくちくした。ミオリネは唇を引き締め、瞳の中には憐みが満ち、気がついたらすでにスレッタの肩に手を回していた。あの堅固で安心感のある両肩が、今は脆弱そうに見えることが、なによりも心を痛めた。

 

  「もう見ないほうがいいわ……」

 

  ボタンに向かって伸ばした手はすぐに握られ、スレッタが親しみを込めて寄り添った。まるで子供のように、ミオリネに慰めを求めている。

 

  ——本当、可愛いこと。

 

  恋人に安心感を求められるままにいて、ミオリネは彼女の肩をしっかりと抱き、スレッタを胸に引き寄せた。軽やかな撫で方は、ミオリネの優しさを表し、しっかりとスレッタの心の波を静めた。

 

  ストーリーが後半に入り、男女の主人公は困難と過酷を乗り越えた後、夜の街を歩いていた。次の瞬間に災いが来る可能性があるとしても、この短い静けさはとても貴重な存在だった。

 

  男女の主人公は互いに愛情を語りかけ、暖かい黄色い街灯の下でキスし、先ほどの恐怖的な雰囲気を払いのけた。

 

  ミオリネは懐中の相手の心臓の鼓動が速まるのを感じ、密着した肌で体温が徐々に上昇していることを知っている。自分が冷え性の体質であることにも関わらず、スレッタの初々しい感情が彼女を包み込み、心臓の鼓動の頻度が同調し、恋人と同じ温度の高さに達していきた。

 

  「ミオリネ……さん——」と、スレッタは微かな声を出したが、聞き手はほとんど気づかなかった。

 

  微かな慰めは、逆に愛する人の欲望を刺激した。ミオリネは自分の手が止められることに気付き、次に愛する人の唇に引き寄せられた。温かい息は手のひらに触れ、彼女をくすぐって、どこか近づくべきだという予感が、二人を一層接近させた。

 

  情熱に身も心も委ね、銀髪の女性はためらうことなく頭を垂れ、恋人の顔を包み込むように持ち上げた。ミオリネが愛する人に優しく触れるたび、白銀の髪もその顔に触れた。鼻筋をたどり、鼻翼にキスされ、スレッタはふっくらとした唇の弾力と潤いを感じ、自分の唇に触れるのを待っていた。

 

  自然な流れでキスを交わし、唇の柔らかな触感は心を落ち着かせ、さらなる愛情を求めたくなった。スレッタは己の欲望に従い、ミオリネの後頭部に手を伸ばし、二人をさらに密着させ、互いに与え合うことを続けた。

 

  キスごとに、何かが溶けていくかのようで、優しくて甘美な感情が唇の間から溢れ出てきた。感情が高まる中で、唇と歯の隙間から漏れる欲望が増幅し、吐息が重くなる中で、ぬるりと柔らかい舌が相手の口に入り、情熱が広がっていく。

 

  スレッタは暑さのあまり、胸をはだけた。唇から全身に広がるしっとりと湿った熱意は、ミオリネの腕の中で甘露と化した。

 

  銀髪の女性は、その目がとろけるような表情を見て、この数年にわたる数え切れない情事の経験から、いったいどういう意味かをしっかりと理解した。恋人の顔から手を離し、求めていた欲望をそのまま、既に開かれた別の場所にぶつけ、豊かな胸を揉み解した。

 

  満足げな喘ぎ声が耳に入り、さらなる触れ合いを求め、肌の隅々まで占領しようと誘うかのようで、柔らかな触感が欲望を満たした。

 

  スレッタは気持ちよさそうに、遠慮せずに声を上げ、銀髪の女性の優しくて丹念な触れ方によって、さまざまな美しい旋律を引き出されている。相手のウィークポイントを熟知している上、熱心に動く指先が蜜裂を割って、硬く尖った赤い花芯をいたずらに弄り回した。

 

  「あぁ……ミオリネさん……」

 

  焦らされてビクッとしている小麦色の肌が赤らみ、スレッタは半開きの朦朧とした瞳で、愛人の名前を熱烈に叫んだ。

 

  一瞬に、赤毛の頭の中には青々と広がる空、そよ風に揺れる雲の画像が浮かんできた。それはいつものランチタイムに見かける、青空と流れる雲の景色だった。

 

  スレッタはすぐに、この景色の意味が分かった。

 

  ミオリネも愛する人の反応に気付き、動作を停止し、彼女がどう出るのかを待っていた。

 

  「なるほど……私こそが綿菓子なんですね……」赤毛の女性が感慨深げに囁いた。

 

  わざわざ純白の雲を取る必要すらなかった。なぜなら、例えミオリネから何も求めていなくても、スレッタも喜んで自分自身を捧げる。最愛の人に自分を贈ることは、何ものにも代え難いことなのだ。

 

  「ミオリネさん……」赤毛の女性は愛する人を優しく引き寄せ、鼻の先が触れるようにして「綿菓子として、私自身を贈ります……あなたに」と言った。

 

  「何それ?」銀髪の女性は笑い出し、眉尻を下げた顔で「言っていることがわからないわ」と返した。

 

  ミオリネは愛する人を抱きしめ、垂れた前髪が微笑みを隠せず、ただ抱擁を強めて愛する人に温もりを提供する。

 

  「もちろん、いいわ」

 

  愛する人の斬新な考えに対して、ミオリネは喜んで受け入れる。分からない部分もあるけど、スレッタの自分への深い愛情を理解している。彼女はそう思って、愛する人の弾力のある頬っぺたに優しくキスを落とした。

 

  「あんたは何であってもいいのよ……でも何でもなくてもいいの。なぜなら、私だけのスレッタであり、時を共に歩むことのできる唯一無二の花婿さんで十分だわ」

 

  「ミオリネさん……あなたも私だけのミオリネさんであり、私の花嫁さんです」

 

  柔らかな唇が触れ合い、溢れる「愛しています」という気持ちを、情熱的なキスに含まれている。

 

  映画は終わりを迎え、静かに幕を閉じたが、二人だけの物語は続いていくだろう。

 

 

  ★

 

 

  何時からだろう、スレッタはよく仰いで、空を見上げる。時には昼間、時には夜。

 

  仕事が終わる時間になると、今回はスレッタの作業が予定通り完了し、いつもよりも早く休むことができた。

 

  簡潔にミオリネに報告した後、愛する人から先に帰ってもいいと伝えられたが、夕日が完全に水平線の向こうに沈む前に、黄昏の色合いが少しロマンチックで、スレッタは家に帰るのを躊躇した。

 

  妻が仕事を終える前に、彼女は人工的な美しい景色を楽しみながら、妻のいるビルまでゆっくりと歩いて、下で待つことにした。

 

  すると自動ドアが開き、びっくりした表情を見せる妻とばったり会った。

 

  「あ、ミオリネさん、仕事が終わったんですね!」

 

  パートナーに笑顔を向けられ、驚きの顔は柔らかくなり、薄メイクの顔に淡いピンクが浮かびた。

 

  「あのね、先に帰っていいって言ったでしょう?」ミオリネの手は腰に当てて、相手を責める筈の口調はあまりにも物腰が柔らかくて、怒りの感情も込めていなかった。

 

  「だって、ミオリネさんと一緒に帰りたかったもん」スレッタはそう言って、小麦色の指がいたずらに雪色の小指を軽く引っかけた。

 

  二人は肩を並べてビルから出た時、周りはすっかり暗くなり、道路の表面はうっすらとした光で照らされていた。

 

  「あんたは本当に、とんでもないくっつき虫ね。もう大人になったんだろうに」

 

  小指をわざと離し、繋がらないようにしていると、隣にいる人が隠せない戸惑いに気付き、ミオリネはこっそりと喜んだ。

 

  「ミオリネさんが、嫌なんですか?」赤い眉尻が下がった。

 

  「別に嫌じゃないわよ——」

 

  小さな白い手が小麦色の手のひらに触れ、そっとなでて、手がしっかりと結ばれた。

 

  ミオリネが積極的にアプローチしてきたことにより、スレッタは驚きと幸福感に包まれた。二人はお互いの手を握りしめ、フロントの港に向かおうとした時、いいアイデアがはっとひらめき、スレッタは動きを止めた。

 

  「映画のように、港へ歩いて行ってみませんか?」

 

  小麦色の指が何度か軽く揺れ、ミオリネはこの相手を試すような仕草から、スレッタの期待を察しました。

 

  言葉にしなくても、恋人が何を考えているのか分かる。スレッタは十代の頃からロマンチックな雰囲気に夢中で、ミオリネはいつも赤面しながら拒否するが、自分が控えめすぎて感受性に欠けていることを自覚している。多くの経験を逃す可能性があるので、もう少し大胆になるべきだと思った。

 

  迷った末、ミオリネは愛する人の輝くような目に抗うことができず、提案に従うことを決意した。少女趣味の雰囲気に浸り、それでスレッタが喜ぶなら、たとえ抵抗感があっても、それはすぐに消えてしまうだろう。

 

  ミオリネは、現在地から港までの距離を考え、ため息をつきながら「もし途中で疲れたら、私をおんぶしなさい」と言いました。

 

  「もちろん、問題ありません!」スレッタは拳を握り、胸を軽くたたいた。

 

  そして、歩道に向かって歩き出す二人は、手を繋いだままだった。

 

  夜が訪れ、道路に設置された柵に沿って時折軽く風が吹き、涼しさを運んでくれて、髪の毛が微風に舞い上がっている。

 

  おそらくミオリネは、幼少期からの自立した性格や、親密さを外部に見せるのを恥ずかしいと感じているため、人が多い場所にいると常に個々に行動する傾向がある。自分から誘わない限り、ほとんど手をつなぐ機会がなかった。

 

  それにより、スレッタは恋人同士の親密なやりとりに羨望を抱き、時折ミオリネに執着心を見せることがあった。基本的にミオリネはぎこちない反応をし、二人きりの時間にならない限り、小さな少女の所有欲を感じることができなかった。

 

  天空には無限の星の光が瞬き、例え自分のいるフロントが星に囲まれていても、モビルスーツに乗って境界線を飛び越えると、星々は広大な宇宙の中で見かけることができる。

 

  でも、今は恋人と一緒に地上に立っていて、星を見上げるだけでもロマンチックな出来事だ。

 

  宇宙の中にいて、間近に見る星々によって心を震わせるより、こうして一緒に歩いていて、遠いところで星の埃を仰ぐだけで、十分美しいものと感じられる。スレッタは手を握りしめ、やや冷たい掌から伝わる感情を受け取った。

 

  「こんな風に一緒に歩いていると、本当にロマンチックですね……私たちが」

 

  背の高い女性は感慨深げに言うと、ミオリネは手で唇を押さえて微笑みをして、「そうね」と返事をした。

 

  もしもスレッタと一緒に勇気を出して、父親と対抗しなかったら、自分はおそらく縁談の付属品になっていたし、二人が世の中の素晴らしいことを経験する機会すらなかっただろう。これらのことは、自分だけの功績ではなく、スレッタが自分と共に歩んでくれたことに感謝するべきである。スレッタが言ったように、「逃げたら一つ、進めば二つ」ということだ。束縛から解放されたミオリネは、自由を手に入れて、自分のしたいことを何でもできるようになった。

 

  「ミオリネさん、覚えていますか?綿菓子のこと」

 

  「え、何?」

 

  思考が目の前の歩道に戻し、ミオリネは退屈な映画と、その後の濃密なキスと情事を思い出した。もちろん、ああいうことはすっかり普通になっていたが、このタイミングでその光景が浮かび上がると、顔は思わず赤らんだ。

 

  「お、覚えているわよ……どうしていきなり、それを持ち出すの?」

 

  「それはね、だって……」スレッタは顔を掻いて、ちょっと恥ずかしそうに、「最近は空を見るのが好きなんだ。雲を見ると、ふわふわとした感じがして、まるで綿菓子みたいだなあと思って、ミオリネさんに贈りたくなってさ——」

 

  「その天真爛漫な考え、まるで子供みたいね」話を聞いて、銀髪の少女はつい笑ってしまった。

 

  「むぅ、また子供だって言われた……」

 

  スレッタはうるうるとした目で相手を見つめ、ミオリネの心からの笑顔を見ると、彼女につられて幸せそうな微笑みが浮かんだ。

 

  「でも、その後は綿菓子になりたいって言ったじゃない?」と言って、ミオリネは眉を上げて神妙に笑った。

 

  「だって、綿菓子よりも……」

 

  スレッタは珍しく、恥ずかしがっている様子だった。

 

  「自分自身をミオリネさんにプレゼントしたほうが、もっと嬉しいかなと思って。甘くないかもしれないけど、ミオリネさんはいつも優しく心を溶かしてくれて、私のことがまさに綿菓子のようだ」

 

  スレッタの言葉はあまりにも真摯で、天真爛漫で、ミオリネを笑わせた。

 

  「馬鹿だね」銀髪の女性が愛する人の腕を軽く叩きながら、蚊のように細かい声で、「あんたとの会話が心地よく、綿菓子のように甘いと感じて……それで十分のよ」と囁いて、前髪覆う顔が赤くなった。

 

  「あれ?なんて言ったの?」

 

  「何でもないわ」

 

  二人は道路を歩き続け、港まではもう数百メートルしかない。目的地に近づくにつれて、スレッタは別れを惜しむような寂しさを感じた途端、時間をもっと長くしてほしいと思った。星々の輝きの下で、二人はぴったりと寄り添い、これ以上のない幸福感をずっと味わいたいのだ。

 

  手を空に伸ばし、キラキラと輝く星々は簡単に手に届くかのように感じたが、手を離すとそれらは依然として空で高く光っている。

 

  「星を摘んで、ミオリネさんにあげたいなぁ……」握りこぶしを見つめて、スレッタは思わず言葉をこぼした。

 

  「まったく、綿菓子の次は星なの?」ミオリネは愛しい人をおかしくて可愛いと思った。

 

  「綺麗なものを見るたび、どうしてもミオリネさんにあげたくなるんだよ」

 

  呆れる口調をする妻を見つめながら、スレッタは何かに気づき——

 

  「うわっ——?」

 

  赤毛の女性がいきなり自分の前に立ち塞がり、温かい黄色い光を遮った。次の瞬間、ミオリネは抱き込まれ、銀河のような髪が風に揺れる中、突然のことに戸惑っている。

 

  「スレッタ?」反射的に背の高い女性の広い背中に手を回し、ミオリネは困惑して微かな声を出す。スレッタの突発的な行動は、彼女にとってはもうごく普通のことで、さほど驚かないけど、愛する人のことが恋しくて抱きしめたくなるのだろう。ミオリネは彼女をなでながら、抱擁を通じて暖かさを与えた。

 

  小麦色の大きな手が、滝のような銀の髪の毛にそっと差し込んで、優しい感情を込めてミオリネのことを見つめる。

 

  「ミオリネさん、あなたは私の銀河系です」

 

  ミオリネは目を見開いた。銀河はすべてを受け入れることができ、暗闇さえも共有し、ひょっとして万物の喜怒哀楽を感じることもできるかと思っている。スレッタの目には、ミオリネが光を放っているかのように、しかも自分のために輝いている。

 

  細い銀色の糸が指の間でキラキラと輝き、スレッタはそれをしっかりと握りしめ、まるで星の光を掴むかのようだった。そして手を離すと、繊細な糸は春風に吹かれて掌から離れ、手から美しいものが失われていくかのように、一瞬だけけれども暗い気持ちになった。

 

  雲のように軽やかな体は、髪の毛のように儚く消えてしまうかもしれない。そんことを考えながら、スレッタは思わず抱擁の力を強め、星の河が消え去ることのないように、愛する人を自分の腕に閉じ込めた。

 

  「ス、スレッタ?」

 

  「ミオリネさん、あなたは銀河として、私にくださいませんか?」

 

  銀髪の女性はあっけらかんと固まり、やがて感情が広がり、その瞳がまるで水面のさざ波が広がったかのようで、当然のように返事をした。彼女は腕を引き締め、スレッタとより密接に寄り添って、お互いの体温や柔らかさ、心臓の鼓動を感じ、穏やかで安心した気持ちに包まれた。

 

  「いいよ」

 

  スレッタの心の中で永遠に輝き続ける銀河でありたいと、ミオリネはそう願った。

 

  ★

 

  ミオリネは時折、ある夢を見る。

 

  瞼を開けると、海の水平線がどこまでも続き、虚ろな世界が目の前に広がった。彼女自身がただ呆然と座っていて、そして日々はダラダラと過ぎていく。

 

  いつの間にか、ミオリネも明確な日付を思い出せないほどのある日のある時に、海が一瞬波立ち、知らない女の子が急に近いところに現れ、この静かな場所に飛び込んできた。

 

  まるで太陽のような鮮やかな赤い髪が、ミオリネの冷たい銀色の瞳を燃やすように見えていた。

 

  「こんにちは、私はスレッタです」

 

  赤髪の少女が自分に手を差し伸べた。

 

  「ここに座ってもいいですか?」

 

  スレッタは自分の横の位置を指した。

 

  赤髪の少女の口元が緩み、ミオリネは彼女から暖かさを感じ取って、自分のそばにいてほしいという願いが伝わってきた。

 

  本当に変な子供だ。

 

  ミオリネは心の中でそう思って、相手の思いを受け入れるべきかどうかを悩んでいた。そもそも、この状況がどれだけ続くのか、数日か、数ヶ月か、数年かもしれないのに?

 

  最終的に、ミオリネは黙ることを選んだ。氷のような視線がすべてを拒否しており、彼女を外界から隔離しているようなものだった。

 

  冷たい反応をされてもかかわらず、赤髪の少女は座り込んだ。二人は近くにいるように見えたが、同時に遠くにいる感じがした。

 

  空が静かに割れ、虹色に輝き、美しく鮮やかな色彩が広がった。驚いて目を丸くしたミオリネは、凍りついた心が少し解ける気がした。

 

  その後、輝く星空がどこまでも続き、暖かい日差しが照りつけてきた。例え日が変わり続けても、時間はもう止まることはなかった。

 

  ミオリネはここで、世界が既に回り始めていることに気付いた。

 

  彼女の体が徐々に暖かくなり、冷たさもどこかへ消えていった。

 

  スレッタとそれとなく軽く触れると、心地よい鼓動がミオリネに伝わった。

 

  突然、世界が単調な空白ではなくなり、そして赤髪の少女が現れたことで、彼女の人生が生き生きとしたものになっていた。

 

  いつの間にか、お互いの指先が絡み合い、ミオリネの顔も顰めずに、穏やかな気持ちで愛する人の肩に頭を預けた。

 

  以前とは違い、己を中心にする世界ではなく、スレッタが自分のすべてになった。

 

  これからはずっとそばにいて、お互いを離れることはないと、ミオリネは思っている。

 

  ミオリネはゆっくりと、目を開けた。

 

  ささやかな囁きが耳に届き、彼女は上半身を起こし、銀髪が裸の曲線に散らばり、日差しがまばゆすぎて窓を見ることができなかった。ミオリネは視線を横に移し、空のベッドには恋人の甘美な香りと温もりが残っているのが分かっている。銀髪の女性はその場所に近づき、恋人の優しい思いやりを感じながら、彼女の気配を思い切り楽しんでいました。

 

  「ミオリネさん、おはよう」

 

  ミオリネは馴染み深い挨拶を聞いて仰ぎ、ちょうどスレッタが部屋に入り、盛り付けた食事を持っている姿が現れた。プレートの上にはサンドイッチがあり、パンの間からはハムの温かさが漏れ、香りがただよっている。

 

  銀髪の女性はつい目覚まし時計を見て、針がすでに鳴り始めている時間を指している。今回のスレッタは特に元気で、妻にもう少し寝ていてほしいと決心し、自分で朝食を作ることを試した。

 

  「……うん、おはよう」

 

  ミオリネは半開きの目をこすりながら、掛け布団の下にある裸の体は魅惑的で優雅で、見る者の心を奪うように見える。

 

  スレッタは朝食をヘッドボードに置き、愛しい人に近づいた。すると、柔らかくて小さな慰めが顔や体のどこにも広がり、紅い花となって肌に咲いた。そして再び愛し合う熱烈なキスに戻った。

 

  ミオリネは両腕を広げ、愛する人を招き寄せ、スレッタも微笑みながら彼女の募る愛情を受け入れ、その温かさを嚙みしめ、強く抱きしめた。お互いに向ける愛情を受け入れ、相手がため高鳴る心臓の鼓動を感じながら、幸福な瞬間を過ごしていた。

 

  今までの年月の間、時には驚くべき出来事で満ち、時には穏やかな日々が流れてきた。しかし、常にお互いが傍にいることは変わらなかった。

 

  お互いが支え合い、共に歩んできたことが、何よりも大切で、最も美しいものだった。

 

  今後もずっと、二人だけの幸福は続いていくのだろう。

 

  (終わり)

 

  

 

  後書き

 

  こんにちは、剎翼と申します。

 

  ゲストとして、ナイユさんの本で小説を書かせていただけること、大変光栄です。

 

  漫画のほうは、感情表現を探求し細かく書いて、過程も非常に可愛らしいです。

 

  後半、スレッタが決闘に負けた場面は、とても心が痛みますね。人は誰しも、どんなに強くてもうまくいかない時があるものです。ナイユさんが描いた展開は現実に近いもので、それが私の気に入っている点です。

 

  ゲストとして担当の分は、ナイユさんの漫画の中での物語の続編として見ていただけるとうれしいです。彼女たちは第二シーズンの苦難やリハビリの辛さを経験する必要はありませんし、ここでは真剣にガンダム会社で頑張り、愛する人と幸せな未来を過ごすことができて、安心しました(笑)

 

  本文は多彩な天候をテーマにしており、異なる状況で見る空を、二人の生活に差し込ませて、甘口な日常の連続を表現しようとしています。

 

  ここでも翻訳担当のSiyuさんに感謝します。彼女がいなければ、この小説は中国語版にしか収録されないでしょう。Siyuさんのおかげで、日本語版も皆さんに提供することができました。海外の読者の方々も、Siyuさんの翻訳を通じて、スレッタとミオリネの心にある感情を感じていただけることを願っています。

 

  そして、これからもナイユ先生を、どうぞよろしくお願いいたします!

 

  

 

  

 

  

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